2022.08.13
【サステナビリティとは?】メリットや事例をわかりやすく解説
サステナビリティとは?
「サステナビリティ(sustainability)」とは直訳すると「持続可能性」を意味します。
サステナビリティの考え方では、地球環境と人間社会が良好な関係を保ちながら共存し、発展し続けていくことを目指します。
近年大変耳にすることの多い「SDGs」は、貧困や気候変動など世界が直面する課題解決のため、2015年に国連総会で採択された17の「持続可能な開発目標」のことですが、この「SDGs」のSはサステナビリティを表しているのです。
サステナビリティでは、「環境・社会・経済」の観点においての課題解決が重視されます。
「環境」の課題としては森林伐採や海洋汚染、温室効果ガスの排出問題、「社会」の課題としてはジェンダーや教育の格差、難民問題、「経済」の課題としては貧困問題、労働環境整備、セーフティネットなどの社会補償の拡充などが挙げられます。
このような課題の解決を目指し、今後長期間にわたって地球環境を壊すことなく、資源も使い過ぎず、良好な経済活動を維持し続けることがサステナビリティの目標なのです。
サステナビリティが必要とされている理由
サステナブルな社会とは、地球の環境を壊さず、資源も使いすぎず、未来の世代も美しい地球で平和に豊かに、ずっと生活をし続けていくことができる社会のことですが、その実現は容易なことではありません。
例えば、現在、深刻な環境問題として地球温暖化が急速に進行しています。
この主因は経済活動による二酸化炭素の排出量の急増だと考えられており、このまま地球温暖化が進行し続ければ、2100年には最大で4.8℃上昇するという予測もあります。
このような地球温暖化は世界各地に気候変動をもたらし、集中豪雨や干ばつ、猛暑といった異常気象を引き起こすなど、各国で深刻な影響が出ています。
また、地球人口の急増も問題視されています。
2015年に約73億人だった人口が、発展途上国での急速な人口増加によって、2100年には約110億人に達すると予測されています。
地球上の人口が急激に増え続ければ、食糧問題、水不足、さらなる環境破壊などを引き起こす可能性があります。
こうした問題を考えると、人類が豊かに生存し続けるための基盤である地球環境は限界に達しつつあることが分かります。
世界中の人々が力を合わせてこのような危機を脱しようと考えられたのがサステナビリティなのです。
サステナビリティとCSRの違い
サステナビリティと良く混同されがちな言葉に「CSR」があります。
「サステナビリティ」と「CSR」の違いを見ていきましょう。
CSRとは企業の社会的責任のことで、Corporate Social Responsibilityの略語です。CSRでは、企業は利益を追求するだけでなく、従業員や消費者、投資者といったステークホルダーや、環境などへの配慮や社会貢献にいたるまでの幅広い領域において、適切な対応を行う義務があると考えます。
サステナビリティとCSRは「よりよい社会を目指す」という意味で方向性は同じですが、サステナビリティは企業だけでなく、国や個人など社会全体が対象で、CSRはあくまでも企業の事業活動に限られます。
このように対象範囲は異なりますが、企業がCSRを意識した経営活動をすることは、結果的にサステナビリティの向上にもつながります。
CSRについてもっと詳しく知りたい!という方はこちらをご覧ください!
基準となるサステナビリティの指標
サステナビリティの指標にはGRIスタンダードとDJSIなどがあります。
GRIスタンダードとは
GRI(Global Reporting Initiative)は、オランダのアムステルダムに本部を置く、サステナビリティに関する国際基準を策定する非営利団体です。
GRIスタンダードはこのGRIが提供するフレームワークであり、抽象的な概念である「サステナビリティ」を可視化するための指標となります。
2021年1月時点で、世界で4000社以上、日本で80社がGRIスタンダードに準拠して報告書を作成しています。
GRIスタンダードのフレームワークにより、経済、環境、社会に与えるインパクト(プラスとマイナスのインパクト、外部に与えるインパクトと外部から受けるインパクトを含む)を報告し、持続可能な発展への貢献を説明できます。
DJSIとは
DJSI(The Dow Jones Sustainability Indices)とは、1999年に米国のS&P Dow Jones Indices社とスイスのRobecoSAM社が共同開発した投資家向けの指標です。
世界の主要企業の持続可能性(サステナビリティ)を評価し、総合的に優れた企業をDJSI銘柄として選定します。
2021年は、全世界で322社がDJSI銘柄として選ばれ、そのうち日本企業は以下の35社でした。
本田技研工業、伊藤忠商事、小松製作所、LIXIL、三井物産、ナブテスコ、双日、TOTO、凸版印刷、ニコン、積水化学工業、住友林業、野村ホールディングス、味の素、日清食品ホールディングス、オリンパス、シスメックス、資生堂、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、SOMPOホールディングス、三菱ケミカルホールディングス、Zホールディングス、中外製薬、第一三共、小野薬品、日本プロロジスリート投資法人、ファーストリテイリング、丸井グループ、楽天、NEC、野村総合研究所、エヌ・ティ・ティ・データ、オムロン、リコー、ANAホールディングス
企業が取り組むサステナビリティ経営のメリット
企業にとって負担にもなり得るサステナビリティに積極的に取り組むことは、一見するとデメリットが大きいように思う人もいるかもしれません。
実は、サステナビリティに取り組むことには様々なメリットが存在するのです。
ここでは、企業がサステナビリティに取り組むメリットを4つ紹介します。
企業ブランドの成長
ユニリーバは、サステナビリティをブランド戦略の中核に据え、「環境や社会に配慮した製品・サービスを利用したい」という消費者ニーズを捉えるため「サステナブル・リビング・ブランド」を構築し展開することで自社ブランドの成長を図っています。
このように、環境や社会に配慮した製品やサービスを利用したいという消費者のニーズに合わせたブランドを展開することで、自社の成長に繋げることができます。
従業員エンゲージメントの向上
サステナビリティの取り組みには、従業員一人ひとりが自分らしく働ける環境の整備も含まれます。
多様性を尊重し、さまざまなライフステージにいる従業員すべてにとって働きやすい環境とすることで従業員の満足度は高まり、エンゲージメントが向上すると考えられています。
また、働きやすい環境をつくることで、人材採用の面でも大きなメリットがあると考えられます。
コストの削減
サステナビリティの考え方のもと、製品製造過程におけるエネルギーや廃棄物の量、原材料の使用量削減や効率化に取り組むことで、コストの削減も期待できます。
資金調達の幅が広がる
サステナビリティに取り組むことで、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に配慮している企業へ行う投資、いわゆる「ESG投資」による資金調達が受けやすくなる傾向にあります。
最近では銀行からの融資を受ける際にもサステナビリティへの貢献が判断基準となりつつあり、サステナビリティに積極的に取り組まない企業は、長期的な成長、持続性に欠けると判断され、投資や融資などの対象から外される可能性があるということです。
SDGsと企業の取り組みに関する詳細記事はこちら
企業が取り組むサステナビリティ経営のデメリット
このようにメリットが多いサステイナビリティ経営ですが、気を付けなければならないデメリットもあります。
以下では、考えられるデメリットを2点紹介します。
機会損失やコストの上昇につながる
正しく行えばコスト削減が期待できるサステナビリティ経営ですが、中途半端に環境活動に取り組むと、機会損失やコスト上昇に繋がるなどのリスクが伴います。
例えば従来使用していた素材を、より環境に優しいものに置き換えると、コストが高くついてしまうかもしれませんし、既存顧客は離れてしまうかもしれません。
サステナビリティを実現するためには、それらのリスクを承知した上で挑戦する必要があります。
サステナビリティに取り組む部署が孤立する
大企業ではサステナビリティと関連してCSR部が設立されていることが多くあります。
そのような企業において、サステナビリティは企業全体として取り組まなければ効果が出にくいにも関わらず、CSR部が孤立しやすいというデメリットもあります。
企業が取り組むサステナビリティ経営の事例
日産自動車
日本を代表する自動車メーカーの日産は、環境、社会性、ガバナンスの分野における包括的な活動の指針である「NissanSustainability2022(ニッサン・サステイナビリティー2022)」を発表しました。
従来から対策が求められている自動車の排気ガスによる地球温暖化や大気汚染問題の解決のため、日産は電気自動車を開発し、2022年度までに二酸化炭素の排出量を2000年度と比較して40%削減することを目指しています。
ユーグレナ
ユーグレナ社は、「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」をフィロソフィーとして掲げるバイオテクノロジー企業で、世界の食糧問題や環境問題を解決するための事業を推し進めています。
ユーグレナ社では、地球温暖化対策の一つとして、カーボンニュートラルであるバイオ燃料の製造に力を入れています。
2020年にはバイオディーゼル燃料の供給を開始し、2021年には国産で初のバイオジェット燃料を完成させ、バイオ燃料での航空機のフライトを実現しました。
これらバイオ燃料は新世代のサステナブルな燃料として注目が集まっています。
大林組
日本の大手ゼネコンのひとつ大林組では、中長期環境ビジョン「Obayashi Sustainability Vision2050(OSV2050)」を策定しています。
2040年から2050年の目標と事業展開の方向性を定めるとともに、2050年のあるべき姿を定義づけ、具体的なアクションプランとKPIを設定し、地域・社会・人のサステナビリティの実現に向けて取り組みを推進しています。
ユニリーバ
ユニリーバは、「環境負荷を軽減し、社会に貢献しつつビジネスを成長させていく」という経営ビジョンを実現するため、2010年に「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(USLP)」を導入しました。
USLPは、事業成長とサステナビリティを両立するビジネスプランで、そのコンセプトの啓蒙や発信のために世界中で動画配信を行っており、各国のサイトで取り組む意義について明確に伝えています。
USLPの目標は概ね達成され、現在では後継プランとして「ユニリーバ・コンパス」を発表し、気候変動や不平等などの環境・社会の課題を解決しながら成長し続けることを目指しています。
ネスレ
ネスレは2030年に向け、事業活動における環境負荷ゼロの達成を目標に掲げています。
全社で温室効果ガスの排出を削減し、100%再生可能な電力を使用しており、フードロスや食品廃棄物の削減にも取り組んでいます。
ネスレにはサステナビリティに特化した部署はなく、その代わり全従業員がサステナビリティに取り組んでいるのが特徴で、従業員一人ひとりが共通価値の創造というCSVを実践し、事業を通して社会的課題の解決に取り組んでいます。
IKEA
世界最大の家具量販店「IKEA」では、「ピープル・アンド・プラネット・ポジティブになる」という戦略を掲げ、SDGsに沿い、2030年までに達成すべき目標を設定しています。
気候変動に対する取り組みでは、「サステナブルで健康的な暮らしを支援する」をテーマに、節水や節電、ゴミの分別の啓発をしつつ、健康的な生活を送れる商品とアイデアを提供し、原料の85%が植物由来のバイオプラスチックなどを販売し、2016年度には全世界で2,000億円の売上を達成しています。
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