2022.12.17

【アクティブラーニングとは?】そのメリット、デメリットを紹介します!

アクティブラーニングとは?

まずはじめに、アクティブラーニングとは何かについて説明します!

アクティブラーニングとは?

これまでの、教員、教師が一方的に教え、それをただ暗記するだけの教育を「パッシブラーニング(受動的学習)」といいます。一方、アクティブラーニングとは、能動的学習のことをいいます。これは、児童、生徒、学生などの学修者が受け身ではなく自ら能動的に学びに向かうよう設計された学習方法のことをいいます。アクティブラーニングの具体的な方法は、グループワーク、ディベートなどが例に上げられ、知識力などの向上に限らず、学修者の認知的、倫理的、社会的能力、コミュニケーション能力などの向上が目的とされています。答えを丸暗記する知識の習得だけでなく、正解のない議論、課題を通して、自分で正解を探すアプローチ方法、プロセスを重視する学習がこのアクティブラーニングです。

アクティブラーニングはいつから始まった?

アクティブラーニングが取り入れられるようになった背景とは?

アクティブラーニングの議論が生まれる背景には、昨今の急速なグローバル化、少子高齢化、その他の社会問題などの環境、社会構造の変化が主な要因として上げられます。

特に、これまで日本が築き上げてきた製造業を軸としたモノづくり大国・先進国としての姿が失われつつあります。これまでの大量生産・大量消費の時代においては与えられた条件、指示のもといかに正確に、早く取り組めるかどうかが大切な条件でした。従って、学校における教育もそのように、一方的な詰め込み型で行われ、試験もいかに多くの情報を暗記できるかなどを測るものでした。

しかし、現在はこのかつての大量生産・大量消費の観点はSDGsなどの環境問題への取り組みによって見直されています。ほかにも様々な社会問題の解決などこれまでとは違う「答えのない」問題を解決する必要があります。また、これまで重要視されていたいかに多くの知識を暗記できるかなどの能力はAI技術の発展により、私たちに求められる能力ではなくなってきています。したがって、学校、大学などの教育では、教員が一方的に教える詰め込み型の教育では不十分であると考えられるようになり、アクティブラーニングが注目を集めるようになりました。

アクティブラーニングが必要な理由とは?

現在の若い世代が成長して社会で活躍するころには、現在の社会問題が深刻化したり、AI、テクノロジーの発展によりこれまでとは違う社会問題が現れたりと、非常に厳しい時代になることが予想されています。これらの問題に立ち向かい、解決へと歩を進める為には、アクティブラーニングによって得られる「主体的・協同的に課題を発見し解決する力」が必要なのです。

アクティブラーニングってどんな学習法?

アクティブラーニングには様々な方法があります。

ジグソー法

ジグソー法は、次の3つのステップに分かれています。

1.ホームグループ分け:学習者を均等に振り分け、グループを作り、課題を発表します。

2.エキスパート活動:この活動ではグループ内のメンバーごとに違う学習をしてもらいます。その後、同じ内容を学んでいる他のグループの構成員同士でエキスパートグループを組み、学びを深めます。

3.ジグソー活動:エキスパートグループで学習内容を理解し、最初のホームグループへ戻ります。そこで、最初に与えられた課題に取り組みます。課題を解決する中で、エキスパートグループで学んだ内容が必要になるので、協力・プレゼンテーション能力が必要になります。

 

この学習方法では、学習者全員が大きな責任を負い、仲間に学習してきた内容を伝えることが課題解決に最も必要な要素になるため、個人の表現力、理解力も鍛えることができます。



ラウンドロビン

4~6人のグループで順番にアイディアや意見を出していく手法です。ブレーンストーミングの簡易版ともいえるものです。案に対しての評価や質問はせず、新しい考えを次々に生み出していくことに主眼をおいています。

LTD

LTDは「Learning Thorough Discussion」の頭文字を取ったもので、議論を通して学ぶという意味です。これは、インプット・情報収集する個別の予習とミーティング(ディスカッションによる共同学習)を組み合わせて進めていきます。アウトプットやディスカッションを前提としてインプットすることで集中力や理解度が高まり、さらにそれをディスカッションすることで自分とは異なる視点、また論理的・批判的思考スキルや学習意欲の向上が期待できます。

Think-Pair-Share

Think-Pair-Shareは、特定の問題について個人で考えをまとめたのちに、グループを組んで考えを紹介しあう手法です。企業の会議やグループワーク等でもよく利用されています。グループワークやディスカッションにいきなり入る前に、付箋に書き出すなどの、個人で考える時間を設けることで、全員が発言できるようにする効果があります。これによって、自分で考える力と議論のスキルをバランスよく高めることができます。

ピア・レスポンス

ピア・レスポンスは、レポートやプレゼンなどの資料構成において、感想や改善点を互いにフィードバックする手法です。資料の製作者が構成を説明し、それに対してもう一方は良かった点や改善点をフィードバックします。

これは、単に作成した資料の改善画見られることはもちろんのこと、互いに自分の感想、意見などを整理して、相手に正しく、分かりやすく伝える思考力、表現力の向上も期待されます。

マイクロ・ディベート

マイクロ・ディベートとは、短時間で行う簡易的なディベートです。議題に対して、賛成・反対のどちらかの立場を選択し、限られた時間の中で議論を交わします。これは、自分の意見を伝えるだけでなく、反対意見に対する反論を考える必要があるため、相手の主張を予測する能力が必要となります。短時間で発言の時間制限があることから、要点をまとめる力を身に着けることにも役立ち、企業の研修、採用選考等で利用されることもあります。

多人数双方向型授業

多人数双方向型授業とは、大人数での講義における、アクティブラーニングの手法です。課題別に7~8人のグループをつくり、各グループが検討・発表を行います。発表の際には、質疑応答を取り入れ、質問の内容を補足してから発表内容をレポートで提出する、というのが一連の流れです。

グループを細かく分けて質疑応答の場を設けることで、ディスカッションによる学習効果促進が確認されています。参加者が大人数になると、アクティブラーニングの実践が難しくなる側面がありますが、少人数のグループを作って、座学と組み合わせるやり方は有効です。

チーム対抗型多人数討論

競争原理とチーム感覚を利用した討論の手法です。いくつかのテーマの中から、興味のあるテーマを選んだもの同士でチームを組み、そのテーマに対する意見をチームでまとめ、2チームが発表を行い、聴衆はチームに質問を行います。最後に聴衆はより優れた意見のチームに投票を行い、発表の勝ち負けを決定します。対戦形式を取ることで受講者の参加意欲が高まる効果があります。

アクティブラーニングのメリットとは?

知識の定着がしやすい

アクティブラーニングではインプットではなく、アウトプットを行う学習です。これまで自分が学んできた知識を駆使して、問題解決を目指すため、知識が定着しやすいです。

課題発見能力が身に付く

アクティブラーニングでは単に与えられた課題について考えるのではなく、生徒自ら課題を発見し、解決するための方法を考える必要があります。また、その課題には答えが無いものも含まれます。そのため、課題解決の過程でどのようにすれば上手く行くのか、よりよい解決策はないのかという考えを深めることができます。この活動によって課題発見能力、課題解決能力、論理的思考能力が身に付きます。

協調性、コミュニケーション能力が身に付く

従来型の授業は1人で机と向き合いながら行うもので、授業中に他の生徒との関わりはあまりありませんでした。しかし、アクティブラーニングでは、生徒同士で意見交換を行ったり、協力して発表を行ったりします。協力して発表を行う場合には役割分担や、メンバー同士での話し合いが必要です。したがって周りの人と積極的に関わり、協力することによってチームとして作業を行う必要があり、アクティブラーニングを通じて協調性、コミュニケーション能力を身に付けることが可能になります。

表現する力が身に付く

自分の意見を相手に伝えるためには、まず自分の考えを自分自身で把握し、それを頭の中でまとめ、さらに言葉にするという作業を行わなければいけません。少人数のグループワークでは、1人1人の意見が重要です。それぞれの意見をもとに討論や製作を進めるため、自分の意見をしっかりと伝える能力を身に付けることができます。

アクティブラーニングのデメリット・問題点は?

アクティブラーニングは良いところばかりではありません。ここで、注意すべきアクティブラーニングのデメリットを紹介します。

授業の準備、進行に時間がかかる

アクティブラーニングは普段の授業とは違い、グループワークを行うため、時間の確保や準備に時間がかかってしまいます。現在組み込まれている時間わりに加えてアクティブラーニングを実施することになった場合、普通の授業の時間を減らしたり、追加の時間を設けて実施する必要があります。だからと言って、授業の時間を減らしすぎてしまうと、基礎的な学習時間が減少し、基礎知識が身につかなくなります。アクティブラーニングは基礎知識を元にして、発展的な学習として行うものであるため、基礎知識が身につかなくなると、これでは本末転倒な結果となってしまいます。

生徒の主体性依存になってしまう

アクティブラーニングは生徒同士の意見交換などを中心として行われるため、成功するかどうかは、教員側の準備や運営などもありますが、生徒が積極的に参加してくれるかどうかに依存してしまうというデメリットがあります。もちろん全員が積極的に意見交換をしてくれれば、アクティブラーニングの目的として期待されている効果を得ることができますが、現実はそうではありません。自分の意見をいうことが苦手な人や、そもそもやる気が無い人など、様々な理由で、アクティブラーニングに積極的に参加しない人がいます。このような場合ではアクティブラーニングを行っても期待される効果が得られません。また、話し合いの時間も単なるおしゃべりの時間になってしまう可能性もあります。

確実な評価を下せない

通常の授業では、暗記ができているか、理解ができているかなどをペーパーテストの点数で評価することが可能ですが、アクティブラーニングは結果よりも、その学習過程が非常に重要視されます。したがって、その過程を数値化し評価することは非常に難しいことがデメリットにあげられます。

受験に適していない

アクティブラーニングで身に着けられる能力は先程メリットの箇所で紹介したように、課題発見能力、表現力、論理的思考能力、コミュニケーション能力など、受験などの試験では活かせることが少ない能力です。現在、センター試験から大学入学共通テストに変化するなど、受験の方法についても変化がみられてはいるものの、アクティブラーニングが受験に直結するとは言い難い現状です。

アクティブラーニングの失敗事例とは?

アクティブラーニングで最も起こりがちなのが、議論の前提を各自が的確に把握しないまま進めてしまい、個々の発言が活発にならないことです。また、グループワークという形式にこだわるあまり、議論が深くまで進まず、表面的な意見交換で終ってしまうこともあるでしょう。このようなアクティブラーニングの失敗例は、学ぶ側の意欲という問題もありますが、教える側の舵取りが上手くいっていない可能性も十分にあり得ます。

今後アクティブラーニングを適切に取り入れるには?

アクティブラーニングのデメリットと失敗事例について紹介しましたが、それらが起こらず、本来の目的が達成される為には、どのようにすればいいのでしょうか?

アクティブティーチング

アクティブラーニングを行う際には、教師もアクティブティーチングが必要になります。アクティブティーチングとは、教員も生徒の成長にこだわりを持って、主体的かつ能動的に教育を行うことです。アクティブラーニングについて理解を深め、生徒が課題を克服したあとにさらなる課題を示して、課題を克服するといった成功体験を授業時間内に積み重ねる能力や生徒の興味を引く課題を提示できる技術などが求められます。

教える内容の緻密な設計

アクティブラーニングでは、学ぶ側の主体性がもちろん大事ですが、その主体性を発揮させるためにも、教える側の導線がしっかりとしている必要があります。特に、アクティブラーニングを初めて取り組む人たちが対象の場合には、入念な計画を立てることが必要です。

対象者の興味・ニーズの把握

アクティブラーニングは指導者から学ぶ側への知識付与がメインでは無いものの、指導者側は何もしなくていいというわけではありません。参加者の自発性、主体性が引き出されるように、参加者にどのような興味、関心があるかを把握し、 それらの課題に面白さを感じてもらえるようにすることが大切です。

家でもできる「アクティブラーニング」ってある?

アクティブラーニングは学校だけで行われることではありません。自宅でもアクティブラーニングを取り入れることができます。

「Why」の質問を投げかける

家でできるアクティブラーニングの1つ目はその理由を考えるWhyの質問を投げかけることです。なぜ、それをしなければならないのかを問い、考えることで思考力を育てることができます。

体験学習を多く行う

2つ目は、体験学習を多く行うことです。アクティブラーニングでは課題を発見し、解決する力が重要になります。体験学習を行うことによって、自分でその課題を発見し学ぶ力を身に付けることができます。

体験したことを掘り下げてまとめる

3つ目は、体験学習をしたことを掘り下げまとめることです。1つ目と2つ目にあげたことももちろん大事ですが、アクティブラーニングではさらにそれをまとめ、表現することも非常に大切な要素になります。自分の経験をまとめ、さらに自分で疑問に思ったことをまとめる事で論理的思考能力も身に付けることができるでしょう。

アクティブラーニングとESDやSDGsとの関係とは?

アクティブラーニングは、近年話題に上がることが多いESDやSDGsにも良い影響があります。

ESDとは?

ESDとは、「Education for Sustainable Development」の頭文字を取った、2002年に持続可能な開発に関する世界首脳会議で日本が提唱した「持続可能な開発のための教育」のことです。

ESDとアクティブラーニングの関係とは?

ESDとは、気候変動、生物多様性の損失、資源の枯渇、貧困、人権問題などの様々な問題を解決できるような人材を育てる教育のことであり、アクティブラーニングと深く通じるものがあります。地球上で起きている問題を自分の問題としてとらえ、課題の解決に向けて何ができるかを考えることが求められます。

SDGsとは?

SDGsは貧困や気候変動など世界が直面する課題解決のため、2015年に国連総会で採択された、「持続可能な開発目標」のことです。

「環境」「社会」「経済」の諸問題の解決に向けた17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。



SDGsとアクティブラーニングの関係とは?

SDGsでは目標4に「質の高い教育をみんなに」が掲げられており、これは学校に通う子供だけでなく、大人も対象となっています。SDGsの課題は、環境、社会、経済と様々な問題がありますが、アクティブラーニングを実践することですべての課題に対し主体的に立ち向かう能力を養うことにつながります。

SDGsに関する身近な取り組みに関する詳細記事はこちら

無題のプレゼンテーション (1)

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